1990年代後半から急速にインターネットが普及し、多数の企業が営業ツールのひとつとして自社の公式サイトを有するようになりました。ブロガーのためのサービスも流行し、個人サイトの数も急増中です。Webサイトが増加したことによって広告枠も激増し、これまでにない量の配信が可能な技術が必要になっています。
そんな時代の要請によって生まれたのがアドテクノロジー、いわゆるアドテクです。まだ誕生してから年数が経っていない新しい技術ですが、それを武器にして働くアドテクエンジニアの数は少なくありません。むしろ年々増加傾向にあり、フリーランスも徐々に登場しています。果たしてアドテクエンジニアの将来はどうなるのか、フリーランスとして活躍することはできるのか、これらにフォーカスを当ててその行方をお伝えします。
現在のアドテクエンジニアの特徴
アドテクを利用すれば、人力では不可能なレベルの広告配信が実現できます。要するにこれまで以上の高い広告効果に期待でき、効率良く収益を最大化できるようになっているのです。
消費者も自分のニーズに合った情報を選べるようになり、広告主とwin-winの関係が出来上がりました。そのためアドテクの市場規模は年々上昇中です。さらに近年のIT業界全体の人材不足も相まって、アドテクエンジニアのニーズは爆発的に高まっています。
アドテクの種類
アドテクにはメディアに関するアドテク、広告主に関するアドテク、ターゲット分析に関するアドテクの3種類があります。
メディアに関するアドテク
広告効果が高い広告を配信して広告主の広告収益を上げる技術です。Ad Network、Ad Exchange、SSPなどの技術がよく知られています。
広告主に関するアドテク
広告の配信の方法や、表現方法に関わる技術です。従来のマス広告ではできなかった、1人ひとりの消費者ニーズにあわせた広告も可能にしています。DSP、RTB、Retargeting、Dynamic Retargetingなどが代表例です。
ターゲット分析に関するアドテク
広告の配信後、ユーザーがどのような反応を示したのかを調査し、広告効果をデータ分析してより良いマーケティング活動を目指す技術です。Tracking、DMP、SDKなどが使われています。
アドテクの市場規模
とある調査によればアドテク市場は、2012年から2017年にかけて約3倍にも膨れ上がっています。そして2017年の市場は約4000億円と莫大な市場になりました。ちなみに2016年から2017年にはPC市場こそ微減しましたが、スマホ市場は増加の一途です。 アドテクはここ10年ほどで急成長を遂げており、今後もいっそうの発展が見込まれます。とくに2012年から2017年のスマホ市場をみると、なんと約7倍もの成長率です。スマホに関わるアドテク分野は、IT業界でいまもっとも熱い市場だといっても過言ではないでしょう。
会社員か、フリーランスに転身すべきかを比較するポイント3つ
急成長を続けるアドテクは、求人数に関してもつねに需要が供給を上回っているような状態です。フリーランス向けの案件も多く、ほかの分野と比べても受注しやすいといわれています。それではこのような時代のなかで、フリーランスとして独立するのは賢い選択といえるのでしょうか。
フリーランスに転身しても生計を立てられるか
高額単価案件も多いアドテク界隈では、フリーランスとして独立しても生計を立てていくことは十分可能です。もちろん会社員として働き続けるというのも、ひとつの方法かもしれません。しかし自分の能力を試してみたい、いろいろなプロジェクトに関わってみたいなど希望があれば、時代の追い風に乗るアドテク分野に乗り出す価値は大いにあるといえます。
家族がいる場合
そうとはいっても家族がいる場合には、フリーランスとして独立するのをためらってしまうものです。確かに会社員という安定した地位を捨てるのは不安も大きいことでしょう。しかし実際に家族を養っているフリーランスのエンジニアは少なくありません。とくにアドテク界隈は家族持ちのフリーランスが多い傾向にあるとされ、思い切って独立するのは決して無謀なことではないのです。
会社員とフリーランスエンジニアの生活面での違い
会社員とフリーランスエンジニアは生活面でさまざまな違いがあります。たとえば会社員ならば、土日など休みの日は決まっています。一方でフリーランスは休みこそ決まっていないものの、自由に決めることが可能です。もちろんプロジェクトによっては会社員と同じ生活になるケースもありますが、行楽地の混雑を避けて好きなときに気分転換できる自由があるのは、フリーランスならではの魅力だといえます。 また勤務時間も勤務地もフリーランスなら自分で選ぶことができます。満員電車に乗る必要もないかもしれません。服装も基本的には自由です。上記と同様にプロジェクトごとに生活は変化しますので、一概にそうはいえないこともあるかもしれませんが、「選べる」という選択肢があるのは会社員と大きく異なります。家族との時間をもっとつくりたいと考えている人にもおすすめです。
アドテクエンジニアの年収と案件傾向
アドテクエンジニアの年収と案件傾向についてみてみましょう。
アドテクエンジニアの収入
アドテクエンジニアの案件単価は、概して高水準です。60万円から80万円というものも少なくありませんし、なかには100万円を越える案件もあります。フリーランスの年収でいえば、人によってさまざまなところがありますが、最低でも450万円以上は見込めるようです。日本人の平均年収が400万円弱とされるので、平均以上は担保されているといえます。 FAworksのフリーランスアドテクエンジニアの案件の平均月収は65万円です。やはり正社員として働くより高くなっています。
どれくらい紹介会社が手数料をとっているのか
自分が働くことによって、案件を紹介した会社がどれくらい金額をもらっているのか気になりますよね。紹介料や仕組みについて透明性の高い紹介エージェントを探している方が多いでしょう。 FAworksのアドテク案件では、紹介料は頂いておりません。安心してお任せください。
スマホ向け広告配信システムの開発と運用
急成長を見せているスマホ向け広告は、やはり求人数も桁違いです。フロントエンドもバックエンドもあり、これまでのさまざまなキャリアを活かすことができます。逆に広告に関する経験や知識は必ずしも必須ではなく、広告関連の仕事をしてみたいという意欲さえあればOKという案件も少なくありません。また少しでも多くの人材を確保することが急務のジャンルのため、年齢不問案件が多いのも特徴です。
分析・マーケティングのためのツール開発
消費者の行動情報、会員情報、広告効果のデータなどをアドネットワークと連動させ、分析・マーケティング調査を行うためのツールを開発する案件も、アドテク界隈では需要大です。たとえばDMPはユーザー属性と広告接触を比較し分析することが求められ、アドテクの精度を高めるためには欠かせません。今後アドテクの主流がスマホに移ろうとも、こういった基幹をなすツールの需要が絶えることはないでしょう。
アドサーバー構築
高額傾向のアド案件のなかでも、高い報酬を期待できるのがアドサーバー構築です。新規立ち上げからリリース後の運用までを任されることもあるので、長期継続契約を探している人におすすめできます。またサーバー構築に関する求人のなかでもアドサーバー案件は数も多いので、サーバーエンジニアとしてのキャリアを積みたいと考えている人も一考の余地ありです。
アドネットワーク構築
ECモールの構築やEC系メディアを立ち上げ、そこに広告を統合的に配信するアドネットワークシステムを構築する案件も比較的高単価です。ECモールオープン後の運用を任されることもあり、契約更新にも期待できます。
アンケートアプリの開発
スマホ関連のアドテク求人は、アンケートアプリの開発なども高額単価案件です。アンケート形式の広告は現在も人気がありますが今後はさらなる需要増が見込めます。スマホ関連の案件でも、とくに注目したいジャンルのひとつです。
フリーランスエンジニアが高単価案件を受注するために
フリーランスがアドテク求人の高単価案件を受注するためには、どのようなスキルが必要なのでしょうか。身につけておくと望ましいスキルをピックアップしてご紹介します。
広告サービスの開発・運用経験
やはり何らかの広告サービスを開発したことがある、もしくは運用した経験があるアドテクエンジニアは強いです。広告サービスでなくとも、BtoCのサービスフロントエンド関連の開発・運用経験も歓迎されます。
アジャイル開発の経験
アドテクの世界は日進月歩です。開発を進めているなかで、状況が変化してしまうことも珍しくありません。そこで求められるのがアジャイル開発の経験です。短いサイクルの開発期間での決定、実装、テスト、修正、リリースを繰り返していくことで、リスクを最小限に抑えることができるスキルは時代にもマッチしています。
サーバー構築と運用に関するスキル
アドテクの案件にはアドサーバーを立ち上げる案件も少なくないため、要件定義からプロジェクトに参加した経験があるアドテクエンジニアは重宝されます。Seaser2、Spring、PlayなどのFW、MYSQL、高負荷システム開発などの経験もあると良いでしょう。アドサーバー関連はアドテクに関する知識よりもサーバー構築のキャリアが問われることが多いため、アドテクの知識を身につけたいと考えているサーバーエンジニアにもおすすめです。
コミュニケーション能力
アドテク関連では大規模プロジェクトも珍しくはありません。要件定義から関わることもあり、また広告業界をはじめとしたIT業界とは異なる分野の人と接触する機会も多いです。そのため円滑にコミュニケーションができる能力を有していると、高単価につながるケースもあります。
長期案件に耐えうる能力
求人情報では、アドテク求人の稼働期間は他ジャンルと大差がないようにみえることもあるかもしれません。しかしじつは、アドテク関連のプロジェクトは構築から運用までといった、長期間に及ぶものが少なくありません。短期プロジェクトにばかり追われるのも大変ですが、ひとつの企業と長い期間、良好な関係を築く必要のある長期案件に耐える必要があるのです。意外とみられるポイントですので、自信があるときは逆にアピールしていくと良いでしょう。
英語力
国内でアドテク関連の仕事をする分には、英語力は必ずしも必要ありません。しかし英語力があればもちろんチャンスは増えます。とくにアドテク発祥の地であるアメリカで、本場のプロジェクトに参加することができるかもしれません。アメリカの案件ならば、日本とは桁違いの高額単価も夢ではないでしょう。
アドテクエンジニアに必要なスキルに英語は含まれるか
アメリカで仕事をしたいと考えている人は少ないかもしれませんが、英語力があればほかに先駆けて高額単価に結びつけることができる情報を得られるのも事実です。
シリコンバレー動向をいち早くキャッチ
IT技術の最先端といえばアメリカですが、とりわけアドテクに関しては同国西海岸がトップランナーです。最新情報はシリコンバレー界隈から発信されるため、英語力を身につけておけば最新技術のリリースもいち早くキャッチすることができます。 近年では個人で翻訳をしてブログに上げている人も多いので、時間が経てばおおよそのマニュアルも技術書も目を通すことができます。しかしほかに先駆けて読み込み、アドテクエンジニアとしてのセールスポイントにしたいならば英語力を欠かすことはできません。
エンジニアの英語力はどこまで必要か
「英語ができる」というのは、エンジニアの場合にはさまざまな段階があります。たとえば変数名やクラス名ならば誰でも英語で理解できるでしょう。ただし技術書やマニュアルを読む程度になると、英語力に大きな隔たりが出てきます。アドテク関連のオンライン・コミュニティに質問をしたり、答えたりといったレベルになるとさらにハードルが上がります。 英語をどの程度まで使いたいかという線引きによりますが、シリコンバレーの動向をいち早くキャッチしたいレベルになると、ビジネスで使える程度の読み書きは最低限必要になるでしょう。一方で技術書やマニュアルを読む程度であれば、日常生活で使える程度の英語力で問題ありません。ちなみにここ数年では動画でのリリースも多いので、英語を聞いて理解する能力を磨くという手段も考えられます。
プラスアルファの英語力
もしアメリカで本格的にアドテクの仕事をしたいと考えているならば、ビジネスで使える程度の読み書きではなく、ディスカッションやプレゼンテーションで魅力的な喋りができるようになっておくのが望ましいです。むしろ喋りさえできていれば、読みは必須としても書きは最低限で構いません。
アドテクエンジニアの展望
アドテク業界は成長著しい分野であり、今後ますますの発展が予想されています。新しく学習するにあたって、広告関連の経験が必須のようなイメージを抱いている人もいるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。それよりもサーバー、Webサービス、データベースなどを構築してきたエンジニアとしての専門知識を問われることがほとんどです。 アドテクは高額単価傾向の強いジャンルですし、ニーズの急速な高まりからも将来性には大いに期待できます。これまでのキャリアの集大成として、アドテクプロジェクトに手を出してみるのもひとつの選択肢でしょう。英語力さえあれば世界を舞台に活躍できるプロジェクトもあるので、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。