JavaScriptやJscriptといった競合のスクリプト言語が台頭してきたことによって、かつての地位を奪われてしまったVBScript。とくにJavaScriptの成長は目を見張るものであり、いまやグローバルスタンダードな言語としてその存在を確立しています。VBScriptやVBScriptエンジニアの未来は、果たしてどうなるのでしょうか。
VBScriptエンジニアのフリーランスの将来性
Microsoft社が開発したVBScriptは、かつてWindowsOSの標準スクリプト環境として不動の地位を築いていました。しかしWindows7から同言語に替わってPowerShellが標準搭載になり、Windows10ではついにサポート対象外に。
そしてMicrosoft社が自らVBScriptを使い続けるリスクについて、公式ホームページに記載するほどになっています。しかしすべての現場がVBScriptからPowerShellに切り替えているかというと、必ずしもそうではありません。PowerShellに乗り換えていない企業も少なくはないのです。
PowerShellへの乗り換えに消極的な理由
とくに日本企業は、PowerShellへの乗り換えに消極的です。PowerShellでは日本語の使用がVBScriptに比べて面倒になったことが理由のひとつでしょう。テキストファイルの読み書きには手間がかかりますし、つねに文字コードを意識しなくてはなりません。
またPowerShellスクリプトは導入にやや時間がかかります。PowerShell初期設定ではPowerShellスクリプトを実行できず、設定変更はパソコン1台ずつに対して行う必要があります。そのため数多くのパソコンを稼働させている企業は、機能的に十分なVBScriptをそのまま使い続けたほうが、コストパフォーマンスに優れていると判断しているようです。
JavaScriptの台頭
現在のスクリプト言語の主流といえばJavaScriptです。主要なWebブラウザはほぼ100%JavaScriptに対応しています。またWebブラウザにとどまらず、さまざまな環境にJavaScript処理系が移植されています。Flashの標準プログラミング言語に採用されたり、Windows Scripting HostではOS上で実行されるスクリプトとして利用されたりしています。
現状を考慮すると、VBScriptがJavaScriptをしのぐ存在にはなれないかもしれません。しかし一方が作った関数を他方から呼び出す方法もありますし、それぞれに得意とする分野も違っているので、共存し続けることも不可能ではないでしょう。
VBScriptエンジニアに将来はあるのか
Windows標準搭載ではなくなったものの、VBScriptの需要はいまだ少なくありません。JavaScriptのようなメジャーな存在ではなくなりつつありますが、それは扱えるエンジニア数も減少してきているということでもあります。実際に、今後もセキュリティ対策やバグフィックスなどのメンテナンス、アップグレードといったプロジェクトが絶えることはないと考えられているところ、請け負うスキルを持っているエンジニアは年々減少傾向です。
爆発的な成長期にある言語は求人も多い分、技術者も少なくありません。結果、食い合いになることもあります。しかしVBScriptのような安定期を過ぎた分野ならば、その技術者は徐々に希少価値を増していくため、激しい競争を勝ち抜かなくとも、高額単価案件を受注できる可能性は高まります。もしJavaScriptの台頭により不安に思っているならば、諦めるのはまだ早いかもしれません。
VBScriptのフリーランスは生計を立てることはできるのか
安定期を過ぎたVBScriptですが、このような状況でフリーランスとして独立するのは良い選択なのでしょうか。また生計を立てていくことは可能なのでしょうか。以上のふたつのポイントについて解説していきます。
フリーランスの求人はあるのか
現代でもさまざまな求人サイトで、VBScriptエンジニアの募集をみかけます。Web系システムマスター、社内システムエンジニア、インフラエンジニアなどさまざまな形態を選択することも可能です。汎用機の開発や保守の分野など、高額単価を期待できる案件も少なくありません。とくにMicrosoft社が開発したWebサーバ、IISにおいては強みを持っていますし、動的HTMLが生成できるという魅力は衰えていません。
しかも最近では安定期を過ぎたVBScript要員を、正社員として採用する企業は減少しています。VBScript関連の仕事は外注で、という傾向はますます強くなっているのでしょう。VBScriptプロジェクトそのものは減少しているかもしれませんが、フリーランス案件に限ってはまだチャンスはあると考えるべきです。
フリーの収入はどれぐらいか
VBScriptフリーランスエンジニアのための案件単価は、50万円前後で推移しています。これは他の言語と比較しても平均的な水準です。そして特筆すべきは、フリーランスのVBScriptエンジニアの少なさ。スキル見合いのことがほとんどなので、長年VBScriptにたずさわってきたエンジニアならば、高額単価も期待できます。そのため生計を立てていくことは十分可能です。FAworksのフリーランスVBScriptエンジニアの案件の平均月収は60万円となっており、比較的高めの単価となっております。
ライバルが少ない
現在隆盛を誇っている言語ならば、案件単価はもう少し高いこともあります。しかし、それだけライバルも多く、高額単価案件を契約するためには競争に勝ち抜かなくてはなりません。新規サービスを短い期間で立ち上げる必要があるなど、やりがいがある反面、どうしても現場はスピード感溢れるものとなります。
一方VBScriptなら、ライバルとの熾烈な争いをしなくても、一定額以上の案件を高確率で契約できるというメリットがあります。また現場も比較的落ち着いたところが多いといわれています。
VBScriptの案件傾向と特徴
VBScriptを必須条件にしている案件は、具体的にどのようなものがあるかみてみましょう。
年齢不問案件が多い
旬の技術だと必然的に20代~30代限定などの、年齢制限を設けている案件も少なくありません。一方でVBScriptは、年齢不問案件が多いという貴重な存在です。エンジニア30歳定年説もありますが、VBScriptのようにある一定年齢以上でなければ、身につけていない技術というものもあります。流行を過ぎたからこそ、逆にエンジニアの希少価値が高まるという側面もあるのです。
精算あり案件が多い
VBScriptフリーランス対象の求人のほとんどが、精算あり案件です。もし当初の予想見通しよりも、著しく稼働時間が必要だった場合などは、単価の見直しがあります。比較的キャリアの長いエンジニアを対象としている案件も少なくありませんし、大企業がスポンサーの案件も多いです。契約内容もきちんと精査されており、これらの点について心配する必要はないでしょう。
Windows環境下の基板設計
Windowsのバージョンが更新しても、VBScriptがWindows下で使いやすい言語であることは変わりありません。実際にWindows環境での基板設計、構築業務に関する求人が目立っています。VBScriptは斜陽言語のようにいわれることもありますが、このジャンルの求人数の多さを考えると、まだまだニーズがあることをあらためて実感することができます。
大手企業でのインフラサポート業務
大手企業に常駐してITインフラをサポートする業務でも、VBScriptは必須とされるケースがあります。フリーランスでも常駐業務にたずさわることができれば、生活リズムを作りやすいです。ただし高額単価案件になると、緊急時には休日出勤、夜間出勤を要請されることもあります。
仕様変更に伴うリグレッションテスト
VBScriptで書かれたプログラムの仕様変更に伴うリグレッションテストスタッフも、比較的多くみかける求人です。現在でもあえてVBScriptを使用しているのは、大企業というケースも少なくはありません。そのため全体的な単価も高めです。
カスタマーズツールとバージョンアップ開発
新規プロジェクトはあまりみかけないVBScript界隈ですが、カスタマイズツール作成、バージョンアップ開発もみかけます。これまで使用してきた仕様や設計がすでに存在しており、コーディング対応というケースも目立ちます。
高単価案件を受注するには
VBScriptには前項のとおり、さまざまな案件があります。それではフリーランスとして高額単価案件を受注するには、VBScriptにプラスしてどのようなスキルが必要なのかをみてみましょう。
各種スクリプト経験
大手企業常駐のインフラサポートは、高額単価案件の代表例のひとつです。こちらではVBScriptのほか、bat、PowerShellなど複数のスクリプトを経験していることを求められます。インフラストラクチャを理解してユーザーにアドバイスをした実績や、リリース管理をした経験なども歓迎されます。
またとくに歓迎されるのはJavaScriptです。近年もっとも人気の高いスクリプト言語ですし、VBScriptからJavaScriptへの変更という案件もあります。VBScript以外の強みも欲しいと考えているならば、案件数からみてもJavaScriptを習得しておくと良いでしょう。
物流に関する知識
物流管理システムにもVBScriptはよく使用されています。高額単価案件をみると、物流管理システムモジュールの作成といった案件も珍しくはありません。ただしVBScriptに加えて、PLやSQLのスキルを併せ持ち、詳細設計の経験も必要です。物流に関する知識があるとより重宝されます。
金融に関する知識
証券会社では、いまでもVBScriptを採用しているところが多いです。証券取引に関するWebシステムのリグレッションテスト等の案件もよくみかけますが、いずれも証券取引についての知識を必須としています。証券会社でエンジニアとして働いた経験があればいっそう歓迎されます。金融系の案件は高額単価の場合が多いものですが、証券会社も例に漏れません。
コミュニケーション能力
基幹業務システムの改修と運用業務も多いVBScript界隈では、ユーザー対応までできると案件単価もアップする傾向です。ユーザーから要件を収集し、システム要件を取りまとめ、ベンダーに要求仕様を説明するといった折衝業務は、得意・不得意が分かれるところかもしれません。社内SEとして働いたことがある、ベンダーコントロールをしたことがあるといった人は、その経験を活かすチャンスになるでしょう。
モジュールの作成経験が豊富
VBScript案件は、すでにある基盤にサーバモジュールなどの各種モジュールを付け加えて、動作チェックをするという仕事が少なくありません。モジュール作成はゼロからシステムを構築するのとはまた違った工夫が必要ですし、何よりも経験がものをいいます。モジュール作成豊富ならば、高額で活躍するチャンスはいっそう広がります。
VBScript以外のスキルも視野に
VBScriptのみで案件を確保することは可能です。しかしどうしても保守や改良がメインになる予想が立ちますし、これから新規の大規模プロジェクトが次々に立ち上がる見込みはありません。そこで他のプログラミング言語を習得しておくのも、活躍するためにできるひとつの方法です。
JavaScript
もしHTMLの経験があり、VBScriptエンジニアとして働いた経験もあるなら、JavaScriptを習得するのはそう難しいものではありません。現代でもっとも注目を集めているJavaScriptはそれだけ求人も多彩で、学ぶ価値は大いにあります。
JavaScriptはさまざまなシステムのフロントエンドの開発に使用されています。サーバサイドでの開発も増えていて、その活躍の場は多岐にわたります。ゲームなどで実際にユーザーの目に触れる部分を手がけることが多く、これまでのVBScriptでの仕事とはまた違った達成感を得ることも可能です。
PHP
もっとも求人が多い言語のひとつがPHPです。Webサイト開発の現場での人気は根強いものがあります。小規模システムの開発に最適なため、数多くの企業内システムでも採用されているようです。常駐高額単価案件も多数みかけます。何か疑問点があった場合にも情報収集先が多く、同僚などに相談する機会のないフリーランスでも安心です。
SQL
データベースを操作するにあたってSQLは大変便利です。システム開発には欠かせない技術ともされますが、じつは苦手な人も少なくありません。そのためSQLエンジニアのニーズは非常に高いです。専門性の高い言語を身につけておくことで、高額単価案件との出会いはいっそう多くなることでしょう。
Scala
JavaScriptやPHPやSQLのような、王道中の王道ともいうべき言語を取得するのも悪くない選択です。ただVBScriptとは逆に、これから破竹の勢いで成長していくと予想される言語を身につけておくという攻めの戦略もときには必要です。
その筆頭に挙げられるのがScalaです。最近ではWeb開発、アドテク開発、ゲーム開発などの現場でScalaエンジニアを求める声が高まっています。いまもっとも注目されている言語のひとつですので、習得するだけの価値はあります。
VBScriptにはかつての勢いこそないものの、使いやすさや独自のメリットによっていまだに使い続けている企業は少なくありません。メンテナンス業務などが突然ゼロになってしまうことはありませんし、希少価値のあるVBScriptエンジニアは今後、かえって重宝されていくでしょう。
また競合エンジニアが少ない分、労せずに高額単価案件を契約できるチャンスが高くなっています。しかし遠い将来のことを見据えた場合、何かしらの言語を身につけておくことも重要です。さまざま観点から今後の働き方について検討してみてはいかがでしょうか。